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紙パ技協誌45(3), 383-389(1991).


X線回折による塗工紙の分布(第1報)

-顔料配合比率定量法の試み-


東京大学農学部

江前敏晴・尾鍋史彦・臼田誠人


要旨

 X線回折法を用いて塗工紙の塗工層に含まれる顔料の定量分析を試みた。Alexander の理論から回折のピーク強度比は顔料の重量比に比例するという関係を利用して分析した。

 塗工紙のX線回折図のクレー及び炭酸カルシウムのピーク強度比を調べてみると、塗工層に含まれる顔料比は一定であるにもかかわらず、ピーク強度比は塗工量に依存していた。この原因として原紙に含まれる炭酸カルシウムが影響していることがわかったので、原紙だけの回折図をとり、セルロースのピークと内添されてる炭酸カルシウムのピーク強度比は一定であることからその比を計算した。そして塗工紙の回折図のセルロースのピーク強度にその比を掛けて、その値を塗工紙の炭酸カルシウムのピーク強度から差し引いた。このような方法で、塗工層に存在する炭酸カルシウムだけに由来するピーク強度を求めて再びクレーのピーク強度との比をとると、塗工量によらず一定のピーク強度比が得られた。

 

 さらにクレー及び炭酸カルシウムの混合比を変えたコーティングカラーを調製し、手塗りコート紙を作り、同様の方法でピーク強度比を計算したところ、カラー調製時の重量比とピーク強度比との間に直線関係が得られた。これが定量に用いる較正直線となる。

 

 残された問題点としてダブル塗工の場合、カレンダーがけによるクレーの配向がある場合などはピーク強度への影響がある。