Back to publication list

紙パ技協誌47(8), 1002-1013(1993).

塗工層/原紙界面のモルフォロジー

東京大学農学部
江前敏晴、尾鍋史彦、臼田誠人

ABSTRACT

 塗工層と原紙の界面のモルフォロジーについて研究を行った。モルフォロジーという概念として界面の形状の問題及び塗工層の界面側の組成、すなわちラテックスの濃度の問題の両方を検討した。  原紙の粗さがそのまま界面の粗さになるのかどうかを調べるためにサンドペーパーを手抄き紙に押しあてたままウェットプレス、乾燥を行い、密度は均一で表面の粗さの異なる原紙を調製した。これに塗工を行い、72%硫酸処理により原紙を溶解し、界面を露出させた。  界面の形状の観察は、通常のSEMでは識別できないような表面のわずかな凹凸を識別できるトポグラフィックSEMを用いて行い、界面は表面に比べてはるかに粗い形状を持つことを確認した。  定量的評価として、表面は触針法、界面はトポグラフィックSEM法により断面曲線を測定し、カットオフ波長を変えて中心線平均粗さを計算し比較した。波長150μm以下では原紙の粗さに対応し、270μm以上では、原紙の表面が平滑な方がむしろ界面が粗くなった。このことから、乾燥中に蓄えられた内部応力はこの波長オーダーで解放されたと考えられる。  一方、ラテックスの表面へのバインダーマイグレーションは、デンプンを添加したときに激しく起こり、またアルカリ膨潤型ラテックスは、単独ではマイグレーションしないことが分かった。  界面側のラテックス濃度は表面側のラテックス濃度が高くても低くても、乾燥温度に影響されないほぼ一定した濃度プロファイルを示した。