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紙パ技協誌 44(3):391-398 (1990).

液体浸透測定から見た塗工紙の微視的構造

東京大学農学部
江前敏晴・尾鍋史彦・臼田誠人

要旨

塗工紙製造の際のコーティングカラー中のラテックス濃度や乾燥温度は、塗工紙の表面特性やポア構造に大きな影響を与える。今回の報告では、この影響を水の浸透速度から把握しようと試みた。塗工紙への水浸透速度測定は、超音波法によって行った。これは、水が浸透する際の紙の厚さ方向の超音波減衰率の変化として表すものである。

この測定法により得られた結果を以下に示す。

1.塗工層と原紙層では超音波減衰率変化速度が異なり、構造上の相違が液体浸透に与える影響を容易に評価することが可能になった。

2.コーティングカラー中のラテックス濃度が高いほど、また乾燥温度が高いほど、水が透過するのに長時間を要することが明らかとなった。

また、乾燥温度の異なる試料のバインダーマイグレーションの度合が異なることは、EPMAにより確認されたが、水銀圧入法ではポアサイズ分布はほぼ同じであった。