東京大学でを研究してみませんか?最終更新日:2007/04/16 

各大学の学部でいろいろな分野の研究をされていた方、新たに大学院で学びたい社会人の方、東京大学大学院で「紙」について研究してみませんか。紙は身近な材料でありながら製造工程や添加薬品の制御によってその性質を変えることができ 、様々な機能を引き出せる不思議な材料です。紙を科学してみましょう。
記号 大学院修士・博士課程の入学試験について
紙の研究は様々な知識を総合的に使います。皆さんのバックグラウンドを生かせるテーマがきっと見つかります。
東京大学以外の大学の卒業生の方、企業に所属する方、その他資格条件を満たす方は誰でも受験できます。
 
記号 オープンラボ   2007年6月2日(土) 14〜16時 他大学・他学部の受験生向け説明会・研究室見学です。東京大学農学部内弥生講堂で行います。
 
記号 出願期間    《博士課程》    2007年7月3日(火)〜7月5日(木)
                    《修士課程》    2007年7月13日(金)〜7月19日(木)
  
試験期日     《修士課程》〔筆記試験〕 2006年8月20日(月)、8月21日(火)
                       《修士/博士課程とも》 〔口述試験〕 2006年8月28日(火)

受験資格条件など詳しくは、日程・募集要項・入学案内で確認して下さい。
 
記号 テーマについて
現在次のようなテーマを計画中です。詳しい話が知りたい人はメール等でご連絡下さい。直接お訪ね頂いても結構です。
 
記号 バイオミネラリゼーションを応用したバテライト形炭酸カルシウムの調製と紙のハイブリッド化
←バテライト形炭酸カルシウム のナノ粒子(カルサイトはサイコロ状なのにバテライトは球状に凝集します)

バイオミネラルは生体が作る無機物のことで炭酸カルシウムもその1種です。鍾乳洞などを作っている石灰石はカルサイトという結晶形を有する炭酸カルシウムですが、その他アラゴナイトとバテライトという結晶形もあります。バテライトは天然にはあまり存在しませんが、魚が音を感じる耳石がバテライトであることが知られています。バテライトは水中では不安定で、徐々にカルサイトに転移してしまうため、紙を始めとする各種材料への応用はほとんど行われていません。しかし、耳石はバテライトのままで結晶転移しません。なぜでしょうか。共存する天然の有機電解質の働きにより転移を食い止めているのです。この自然の摂理を応用してバテライトのまま材料として紙に応用したらどうなるでしょうか。

また、我々はバテライトを炭酸塩とカルシウム塩から炭酸カルシウムを析出させることにより炭酸カルシウムを合成しています。両者を混合すればすぐに白色の沈殿ができそうですが、実は混合直後も1、2分程度の間はゲル(過飽和)状態を維持します。分かりやすく言えば無色のゼリー状になります。そのときに手で振るなどして衝撃を与えるとサッとカルサイトの結晶を生じます。ですが、強い衝撃を与えた場合はバテライトの結晶になります。なんとも不思議な現象ですが、そのときに有機電解質を入れることによりまた変わった現象が起きます。

バテライト生成過程の解析、パルプ繊維との複合化によるバイオナノファイバーの調製などを行う計画です。

 

記号 - 紙を印刷する - ファイバージェットフォーマー
←ファイバージェットフォーマーの概念図

紙は2次元 限定の材料だと思っていませんか。でも、縦方向(x)と横方向(y)のほかに厚さ方向(z)もちゃんとあります。確かに字は紙の上に書き、印刷は紙の表面にインクを載せるもので2次元的な使い方が普通です。しかし最近では、ICタグを紙に埋め込んで利用するなど、パルプ繊維(幅20μm、厚さ5μm程度)程度の小さい機能材料や機能性チップを支持することもできるりっぱな3次元材料ともなります。このような3次元複合化を プログラムしたとおりに作ることができれば紙に種々の機能を与えることができそうです。

その予備段階として、プログラムしたとおりに任意の特定の場所(xy平面の)だけ紙を厚くするような抄紙はできないものでしょうか。細く絞ったノズルから繊維懸濁液を吹き出させて、指定した場所だけに正確に繊維を載せることができれば、そのような紙ができるはずです。そのような装置= ファイバージェットフォーマー =を試作してみませんか。このような装置で透かし模様のようなものを作ることができればとりあえず第一段階は成功です。面白い紙をたくさん作ってみましょう。

 

記号 文理融合型文化財修復科学の確立を目指した紙文化財修復法の妥当性評価

←紙表面にある繊維の配向度と配向角度計算法

このテーマは文理融合により進展が期待できる歴史学・文化財保存学の中に位置づけられ、東京大学史料編纂所 、東京芸術大学、富山大学、名古屋大学、東京文化財研究所との共同研究になります。文化財としての紙をテーマにしたい方是非おいで下さい。

紙表面のデジタル顕微鏡写真〔図の(a)〕を撮影し、画像処理により2値化(b)後フーリエ変換(c)を行い、フーリエ係数の振幅を中心からの方向ごとに平均して極座標表示(d)を行います。図は手漉きによる美濃紙の例で、図(d)の楕円の短軸が繊維の配向する方向、楕円の長細さが配向度(配向の度合い)を示しています。我々はこの手法を開発し、繊維配向から流し漉きか溜め漉きか、といった抄紙法の推定に成功しました。 さらに漉き簀に接していた面の方が繊維配向が強くなることを発見し、表裏の判別法にもなっています。

和紙を使った紙文化財の補修において最も重要なことはその補修方法が正しかったのかどうかという点です。実際の所は後年にならないとわからないものですが、何とかその評価を今できないでしょうか。一つには、物理的な作用が影響しそうです。補修紙が乾燥したり湿りを帯びたりしながら伸び縮みすることが本紙(文化財の紙)を傷める原因になると予想しています。伸び縮みは繊維の配向性と密接な関係があります。 その他、 望ましい修復法のあり方調査、 水による処理/接着剤/補修紙の物理的及び組織的構造/補修紙の化学的な組成/打ち紙処理(自動打ち紙装置を使って検討)/熟成が本紙に与える影響について検討します。

なお、このテーマに関し、本学大学院に在籍するか否かにかかわらず研究協力者を募集しています。興味のある方は連絡してください。

 

記号 その他
やってみたいテーマがあれば相談に応じます。

東京大学大学院農学生命科学研究科
生物材料科学専攻製紙科学研究室
准教授 江前敏晴

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